ネトゲのキャラ名で登録したLINEで、母親とトークをすることになった

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それはとても悲しい事件だった。

事の始まり

 1年ほど前の事だが、定年間際の母親がスマホを持つことになった。営業職で長年勤めてきたが、営業履歴を更新するのにスマホが必要になり時代の流れだと嘆いていた。そんな母親を看かねた兄が機種の選定・契約・使い方をレクチャーしていたのは知っていた。私は実家とは遠く離れた場所に住んでいる為、兄にレクチャー役を任せて手助けをする事はなかった。それから数週間後に帰省する用事があったので帰省をしたが、その際に母親からスマホの使い方がわかってきたのでメールを送りたいと言われたのでメールアドレスを教えた。その後すぐにメールが送られてきたので確認をしたら「はじめてめえるをおくりました とどいていますか」と書かれてあった。私はすぐさま「とどいています」と隣にいる母親にメールを送った。

 自宅に戻ってきた数日後に「お兄ちゃんからアプリの使い方を教えて貰ったから試したい」と母親からメールが送られてきた。もう漢字の使い方を覚えたのかと関心をしつつ、「どんなアプリですか?」と送ったら、「LINEです」と返答がきた。私は驚くと同時に非常に困った。とある事情でLINEは使いたくなかった。だから母親には「しばらくメールでいいんじゃない?」と送った。「それじゃあ お兄ちゃんで練習しておく」と返答があり悪い事をしたなと心を痛めた。

 

ネトゲ

 10年ほど前からネトゲに夢中だった。最近は興味が薄れてきてやる気がなくなってきたが、それでもまだネトゲとの繋がり、ネトゲ仲間との繋がりは続いていた。どのネトゲかは書けないが、発言の語尾に~~タルと必ず付けてくる人が居たり、シャレオツな骸骨を手に入れて2つ目の職が出来るようになったり、臭い鳥類に乗る為にリアル3日間必要だったり、そんなネトゲに夢中だった。

 やり始めた当初はストーリーには興味がなく、ひたすらソロでレベル上げをしていた。そんなある日、色っぽいお姉さんキャラに声をかけられた。「一緒にレベル上げをしませんか?」と誘われた。これがネトゲの醍醐味だと嬉しくなり「初心者ですが、何卒よろしくお願いします」と答え2人で行動する事が多くなった。その人は非常に知識が豊富で何も知らなかった私に色んな事を教えてくれた。装備・戦い方・クエストなど序盤で必要な事は全て教わった。非常に良い人なのは理解できたが1つだけ理解が出来ない事があった。キャラ名がおかしかった。そのキャラ名は親の金でネトゲ*1という名前だった。出合った当初は何と呼べばいいのかわからなかったが、自然とネトゲさんと呼ぶようになった。

 ネトゲさんは知識が豊富だけではなく人脈も広い事がわかった。どうやらネトゲさんはクエストを卒なくこなす為にとある組織に所属しているらしく、その組織に誘われ私も所属する事になった。誘われる時に「ちょっと可笑しい名前の人達ばかりだけど気にしないでね」と言われたが、あなた以上に可笑しい名前の人がいるんですか?とは聞けなかった。

 組織のたまり場に着いたら小規模ながら人だかりができていて歓迎をしてくれた。確かに職業が分散されていてバランスの良い戦闘構成が出来そうだった。その組織で数年間活動する事になるのだが、長年のネトゲライフの中で一番充実した日々だった。クエストの進行が楽になり、ストーリーにようやく興味が出てきた。ネトゲさんから誘われた時に言われた可笑しい名前の人達というのが理解できた。覚えている数人の名前を書くと、平成狸チ〇〇コさん、全ての罪を背負いし者さん、俺より弱い奴に会いに行くさん、*2などボキャブラリーが豊富だった。

 そんな充実した日々を送っていたが、とある時期を境に不振な空気が流れだした。どうやら新人が問題を起こしているらしい。私はまったり派ではなく、アクティブ派だったので組織のたまり場に常駐する事はなかったから知らなかったが、可愛がられて貢がせる、そんな姫プレイというものが流行っていた。私としてはそれも1つのロールプレイだと思ったので関与はしなかったが、思っていた以上に深刻な問題になってきてグループチャットで罵倒が飛ぶようになってきた。何か手を打とうかと組織でも特に仲の良い仲間達と相談していた矢先、突如組織リーダーが解散宣言をし組織が崩壊した。

 酷く悲しい事件だったが、よく考えたら組織内でいくつも派閥があったし、組織の恩恵を受ける事は特になかったので、気持ちを切り替え仲の良い仲間達で組織に属さず小規模先鋭で活動を再開した。その仲間達とはゲーム内だけではなくプライベートの事も話すような仲になり、何度もオフ会をしてネトゲ仲間というより、ネトゲで知り合った友人という関係になった。そんな仲なのでゲーム内だけのコミニケーションツールだけではなく、メールやSkypeで連絡しあっていたが、各自がスマホを持ち出すようになってからメールではなくLINEが連絡手段となっていった。

 余談だがネトゲさんがどうなったかというと、「新キャラ作ってくるわ」と言った翌日、親の金でガチャ10回*3というキャラで登場した数日後から連絡が取れなくなった。どうして連絡が取れなくなったのかは誰もわからないが、なんとなく察する事もできたのでゲームクリアおめでとうと皆で祝福をした。

 

LINE登録

 私がスマホを持ち始めたのは3年前だ。当時の私はスマホ=iPhoneだと固定概念があった為、迷わずiPhoneを選んだ。その頃にはネトゲ仲間はほぼ全員スマホを持っていて、真っ先にLINEの導入を勧められたので導入の仕方を教えてもらいながらアプリのダウンロードとアカウント情報登録画面へと進んだ。

 名前の登録画面まで進んだところで名前をどうするか悩んだ。LINEを導入する理由はネトゲ仲間と連絡しあう事だった為、当然ネトゲ仲間グループのみ参加する事になる。いくらプライベートの事を話す仲とはいえ、本名までは伝えてなかった。素直に名前をどうしているかを数人に確認したら、仕事でLINEを使う機会がある人は本名で登録していて、大多数がハンドルネーム・ゲームキャラ名だった。仕事でLINEを使う機会なんて一生来ないだろうと思いゲームキャラ名で名前を登録した。

 

要望

 1週間に母から再度メールではなくLINEで連絡したいと要望があり、理由を聞いたら「メールを送っても返答がなかなかないので読まれているかわからない、LINEだと既読表示をするためわかりやすい」と言われた。確かにメールは読んでいるが後から返答をしようと思っていて忘れてしまう事が多かった。

 母の言うことは一理あるし、1年ほど前に断って悪い事をしたと心の中で思い続けていたので友達追加をしようとした。しかし、1年ほど前に断った理由を思い出した。ゲームキャラ名で名前を登録していたからである。そこで私は母に「登録した名前がゲームで使っている名前になっているから気にしないでね」と事前に伝えてから友達追加をした。

 

LINEのやりとり

 その後すぐにメッセージを送り反応を窺った。その様子を今流行りのLINE晒しでもやろうと思ったが、センテンススプリングよりビッグマッセズの方が好きなのでLINEシュミレータで再現することにした。

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 名前変だよ。それは本名ではないから当然だと返そうとしたが、ふと我に返った。名前が変。長年ネットでは同じ名前で過ごしてきて特に違和感もなく使い続けていた。だからネットでの名前を深く考える事もなかったが、何故ネトゲさんは私を誘ったのか、何故組織に加入させようとしたのか、当時の私はゲームに対してやる気があるからだと思っていたが、初対面の私に声をかけた理由は何か。そして組織で多数存在していたハイセンスネームの人達。私の中で全てが繋がったような気がした。母に何と返答しようか悩んだままLINEの履歴はここで止まっている。

 ここで登録名を明かすわけにはいかない。ただ1つ言える事は今では伝説として語り継がれているビックネーム†kuraudo†をリスペクトしている。

*1:仮称です

*2:全て仮称です

*3:仮称だって